姫は王となる。
「花蘭様、どうぞこちらへ」
大広間まで来ると、老婆が扉の前で膝まついた。
「…待っていると言ったが、誰が待っているのだ?」
この大広間で。
「それは、開けてからのお楽しみです。さぁ、お入り下さい」
老婆は立ち上がると、微笑みながら大広間の扉を開けた。
お楽しみって…
老婆に向けていた視線を、扉が開いた大広間へと向けた。
「…え?」
自分の目を疑った。
「…なんで…」
瞬きを何回もしても、凝視しても見えているものは変わらない。
「…どうして…」
身体が震え、目からは涙が零れ落ちる。