姫は王となる。
翌日…
翌日ー…
「護衛長が亡くなったって思ってたの、花蘭女王様か大臣たちだけでしたよ」
西国の王子カイトが風が戻ってきた翌日、城にやってきた。
「…そうみたいだな…」
応接室のソファーに深く座り、ちょっと拗ねた表情でカイトに言った。
風が亡くなったと思って、苦しくて辛い1ヶ月間を過ごしていた。
それなのに、風が療養中だということを知っていた母様や老婆は何も言わず、私には秘密にしていた。
「あの出血量で生きている方も凄いと思いますけどね。ね、護衛長」
カイトが、私の後ろに立つ風に意地悪そうな表情で言った。
「2~3日は生死をさ迷っていたと、後から医者から聞きました。なぜ助かったのか、医者にも奇跡としか言われませんでした」
淡々と答える、風。
「確かに。あの現場にいた人間は皆、生きていたことが奇跡だと思うよ。あの時は、本当に死んでしまったかと思ったから」
奇跡ー…
あの時のことを思い出すと、いまだに胸は苦しくなる。
けど今こうして、風と一緒にいることができている。
風が生きていて、本当に良かった。