姫は王となる。





王室に向かっていた足を治療院に向けてから、5分後ー…



城内の片隅にある、治療院の部屋の前まで来た。


「花蘭様…いえ、王様」

治療院の扉の前には一人の女性が立っていて、花蘭の姿が見えると膝まつき頭を下げた。


その女性は、風のお母様だった。


「王位就任、おめでとうございます。ご挨拶が遅れてしまったことを、深くお詫び申し上げます」

頭を下げているというのに、また深く頭を下げた。


「…いや…気にするな。…ありがとう」

その風のお母様の姿に、謝りたいのはこちらもだという思いが湧き上がってくる。



風のお父様も、父様と兄様を守るために死にー…

息子である風も意識不明で治療院に運ばれ、今さっき意識が戻ったばかり。


もし風が死んでいたら、お母様は一人残されてしまうことになった。



私たち王族を守るために、命を懸けてー…


「っ…」


身体に力が入る。




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