姫は王となる。



「王様!」

治療院に入ると、中にいる医師や看護師たちが膝まつく。

部屋の中を見渡すと、多くのケガ人が治療を受けている。

風と同じように助かり、治療を受けている者達。


…助かって良かった。

言葉に出して言えないが、心の中でそう言った。


「いい。仕事を続けよ」

立つように命令し、医師や看護師たちは戸惑いながらも仕事を続けた。


「風様は、こちらでございます」

1人の看護師が頭を下げ、風がいる奥の部屋へと案内する。

「この部屋にいらっしゃいます。先ほど、意識を取り戻されたばかりで受け答えができるかどうか、わかりませんが…」

看護師は言いにくそうにそう言いながら、部屋の扉を開けた。

受け答えができるかどうか…

看護師が言った言葉が引っ掛かったが、開けてくれた扉をくぐり抜け部屋へと踏み入れた。


「王様、私は部屋の外で待機しております。何かありましたら、お呼び下さい」

後ろに付いてきていた老婆は、部屋に足を踏み入れることもなく、頭を下げそう言った。


「…あぁ」

パタンー…



小さな声で返事をすると、静かに部屋の扉が閉まった。







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