姫は王となる。






治療院の中にある一番奥の部屋に、風がいた。


他の患者達とは違い、この部屋は一人部屋みたいだ。

窓際にベットが一つだけあり、他に物は置いていない。

白色の壁によって、窓が一つしかない部屋の中でも明るく見える。


「…花蘭様」

「!」

部屋の扉の前で一歩も進めず、部屋の中を見渡していると名前を呼ばれた。




「花蘭様…」


…風だ…


風の声だ。


名前を呼ばれただけでー…


声を聞いただけで、涙が出そうになる。



「…」


風が寝ている窓際にあるベットへと、静かに足を一歩を踏み出した。




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