姫は王となる。




窓から入ってくる風で、カーテンが揺れている。


「…風」

ベットの側まで来ると、風の顔を覗き込んだ。

頭には包帯を巻き、はだけた胸元には大きなガーゼが貼られている。

「っ…」

風の痛々しい姿に、堪えていた涙が出てきそうになり、風から目を背けた。


風は生きていた…けど、こんなに痛々しい姿など見たくない。


「…花蘭様」

「!」

背けた顔の頬に、包帯で巻かれた手が触れた。


…温かい。


傷だらけの手だが、温かさは伝わってくる。

その温かさを感じているとー…

「花蘭様…申し訳ございませんでした」

「!」

風が突然、謝った。


驚いて、背けていた顔を風に向けた。


「王様と王子様をお守りできず、申し訳ございませんでした」




< 30 / 247 >

この作品をシェア

pagetop