姫は王となる。


「確かに、王様と風様の婚約は白紙にされたしな…」

「元々は仲睦まじかったから、王と護衛長の関係だと個人的感情を抜きにはできんしな…」

大臣達はコソコソと喋っているつもりだろうが、上座に座る花蘭の耳まで届いている。


「…っ」


心無い大臣達の言葉に、身体か震える。


私が、どんな思いで風の任務を解いたのか知らないくせに!



「…王様、ここは堪えてください。王様らしく、威厳のある行動を」

「!」

老婆が耳打ちをし、そう言った。



¨王様らしく、威厳のある行動¨


「…っ」


拳をぎゅっと強く握り、感情を抑え込む。




「…議題と話が逸れている」

感情を抑えた低い声でそう言い、席から立ち上がった。


大臣達の注目が、急に立ち上がった花蘭に集まる。



「これ以上話していても、何も進むことはない。次回の会議までに、北国への今後の対策とお妃様の状況確認、国民が何に対して不安や不満を持っているのか報告せよ」


そう言いながら、部屋の扉に向かって歩き出す。


老婆は数歩離れて歩いてくるが、大臣達は前回と違い誰ひとり立ち上がることはなく、座ったまま見送っている。


「王の退室ですぞ!!膝ま…」

「いい。行くぞ」

老婆が振り返り、大臣達に文句を言おうとするのを止めた。





これが、今の私の王としての価値ー…






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