姫は王となる。
「私から王様にお伝えするのは、王様に対する国民からの不満です」
国民からの…不満ー…
"国民からの不満"と聞いて、ふっと力が抜けた。
「…続けよ」
私に対する国民の不満は、知っておかなければならない。
「はっ…。私の管轄は、他国との国境の警備を主としております。恐れ多いですが、今回不満を言ってきたのは、国境近くの村に住む村民たちです」
国境近くに住む村民たちかー…
「それで、何と?」
「はっ…。先月の先代の王様と王子様が襲撃されたことで、北国との国境に住む村民たちは
毎日、怯えて生活をしているとー…いつ、北国が攻めてくるかわからない状況の中、王様は何もしてくれないと言っております」
国土大臣は下げていた顔を上げ、真っ直ぐ目を見て言った。
「国土大臣!王様が許しているとはいえ、その言い方は失礼ではないか!!」
老婆が我慢ならないと、声を荒げた。
「…いや、いい。事実だ」
¨王様は何もしてくれない¨
その通りだ。
王位を継承して一ヶ月も経っているというのに、今後の国の方針も決まらず、北国に対する対策も立てていない。
国民が不満に思うのも、当たり前だ。
ましてや、北国との国境近くの村となればー…
「明日、北国との国境近くの村まで視察に行く。そこで、直に村民の声を聞く機会を設ける」
「王様!!」
老婆が¨それは、おやめください¨と耳打ちしてくるが、聞こえないフリをして話を続ける。
「それで良いか?」
じっと、国土大臣の目を見て問いかけた。
「有り難いお言葉…きっと、国民たちも喜びます。では、明日お待ちしております」
国土大臣は深く頭を下げると立ち上がり、部屋から出て行った。