姫は王となる。
パタンー
「…はぁ」
扉が閉まったと同時に、出てしまった溜め息。
緊張した場面から抜けた安堵の息と、自分に対する溜め息が入り交じっている。
「王様、今のこの状況で国境近くに視察に行かれるなど危険過ぎます」
隣に立っていた老婆が目の前に膝まつき、そう言った。
「明日の視察は、おやめください」
老婆は、視察に行くことを強く止めようとするがー…
「いや、行くよ」
「王様!!」
「行かなきゃ、王になった意味なんてないだろう?」
「王様…」
さっきまで力強かった老婆の声が、小さくなった。
そして、悲しそうな表情になった。
「しかし…」
言葉を考えているのか、老婆は俯いてしまった。
そんな老婆の姿を見て、ふっと笑みが出た。
「私みたいな王に使えるのは、大変であろう?嫌なら、いつでも辞めていい」
そう言うと椅子から立ち上がり、扉に向かって歩き出す。
「王様っ」
老婆も急いで立ち上がり、付いて来ようとするがー…
「いい。一人にさせてくれ」
背を向けたまま右手を上げ、老婆が後ろに付いて来ようとするのを止めた。
自分で扉を開け一人で部屋から出ると、外にいた警備兵たちが驚いた表情をした。
「自室にぐらい一人で戻れる。付いてくるな」
そう命令すると警備兵たちは、お互いの表情を見合ってオロオロしている。
いつもならここで老婆が指示を出すが、その老婆にも¨一人にさせてくれ¨と言い、部屋に置いてきてしまった。
「…勝手にしろ」
そう警備兵に伝えると、スタスタと自室に向かって歩き出す。