姫は王となる。






王族として生まれてから、ほとんどの時間を城の中で過ごしてきた。

だからこうして、国民の声を直で聞くと衝撃を受ける。



お母様は北国に人質に取られていることも、父様と兄様が北国に殺されてしまったことも国民たちは知っている。


そして王位を継いだ私では、この国の先行きは不安だとー…



ドン!


「!」

「姉ちゃん、道の真ん中で突っ立てちゃ邪魔だ!!」


人が行き交う道の真ん中で動けなくなっていると、商売人の恰好をしたおじさんがぶつかって来た。


「…すいません」

顔を見られないように俯きながら謝ると、人が行き交う道を外れるように路地に入った。



店と店の間にある薄暗くて、道が狭い路地。


さっきまで歩いていた道とは違い、すれ違う人はいない。



その道を、とぼとぼと歩く。




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