姫は王となる。
黒い布で顔を隠した男の剣を振り払い、風が目の前に現れた。
一ヶ月前は起き上がることも苦しそうだった、風。
けど今、目の前に現れた風は護衛服を着て、俊敏に黒い布で覆った男の攻撃を避けている。
良かった…
こんな状況の中、そんなことを思っているとー…
「ここで騒ぎを起こしては、他の人を巻き込みます。一旦、退避しますので掴まってて下さい」
「え…!?」
早口で風はそう言うと、急に身体が宙に浮いた。
そして風は私を抱きかかえ、森に向かって走り出した。
「くそっ…待て!!」
風の首に腕を回し、落ちないようにしがみ付く。
「風…どうしてここに?」
「理由は後でご説明します。今は、逃げなければ…あの男の後ろにもまだ数人敵がいます」
数人!?
風の言葉に背後を見るが、黒い布の男しか見えない。
あの男の後ろにも数人いるなんて、私にはわからない。
けど、風が言うんだから間違いない。
「王様、森の中に入りますので顔を伏せて、目を閉じていて下さい。枝が顔に当たるといけないので」
「…わかった」
そう返事をすると風は、背後をチラッと見ると森の中に飛び込んだ。
それと同時に顔を伏せ、目を閉じた。
腕は風の首に、しっかりしがみ付いたままー…