姫は王となる。
目を閉じると木の枝が折れる音、葉っぱが擦れる音、風の走る足音、遠くから数人の足音が聞こえる。
風の言う通り、追ってくるのは一人ではないとわかった。
その中で一番近い音は、風の心臓の音と乱れる息。
一ヶ月前に意識が戻ったばかりで身体を起こすのも苦しそうだったのに、こんなに走って大丈夫なんだろうか?
しかも、私を抱えてー…
でも、どうして風が助けに来てくれたんだろう?
私は王命で、風の護衛の任務を解いたはずー…
そんなことを考えていると、風の動きが止まった。
…何?
「風様!王様!」
大きな声と大勢の足音が聞こえ始め、閉じていた目を開けた。
「王様を頼む。相手は一人ではない、複数いる。援護を頼む」
「はっ」
目を開けたのと同時に、足が地面についた。
「王様、こちらへ」
「お前たち…」
目の前にいたのは、王族の護衛兵たち。
「一班は、風様の援護につけ。残りの者は、王様を護れ!」
「「はい!」」
先に追っての元に向かった風の後を追い、護衛兵数人が森の奥へと走って行った。
突然の出来事が色々起こりすぎて、今起こっている状況が整理できない。
「王様、こちらへ」
「あぁ…」
護衛兵たちに指示を出していた男が前に立ち、王の周りを護衛兵が囲んだ。