姫は王となる。


「花蘭様…いえ、王様。私は、王命を破りました。ですから…」

風はそれ以上、言葉を続けなかった。

「…」


王命を破りその罪を償うために、命を差し出すというのか?




私は風を傷つけたくなくて、死んで欲しくなくて遠ざけたのにー…

王命を破ったことで、王である私の手で風を罰するというのかー…?






「…私は、この国の王だと思えるか?風」


国民にも大臣にも誰にも認められていない私が、王命を下し、その王命を破ったということで、誰かの命を奪えるというのか?



「…もちろんです。王様」

風は頭を下げたまま、そう答えた。


…そうだ。

そう答えるしかないんだ。


けど、心のどこかで風は皆と違うことを言ってくれるんじゃないかと、勝手に期待していた。








< 57 / 247 >

この作品をシェア

pagetop