姫は王となる。
「先日の王命を取り消し、新たに護衛長としての職務を与える。この国のために、任務を全うしろ」
「はっ、王様。有難いお言葉、感謝致します。職務を全うし、王様のお力になるよう精進致します」
立っていた風は膝まつき、頭を深く下げ忠誠を誓った。
「…ただし、命を懸けるな」
そんな風の姿を見て、思わず出てしまった言葉。
深く頭を下げていた風も、驚いた表情で顔を上げた。
「この国のために…私のために死ぬのだけはしないで…必ず生きて、私と共にこの国を守り続けると誓って…っ」
父様と兄様を守って、血だらけになった風をもう二度と見たくない。
風が死んでしまうかもしれないと思うのは、もう二度と経験したくない。
王として言わなければいけなかったが、この言葉は風を愛していた自分の言葉だ。
もう、昔と同じようにはなれないかもしれないけどー…
「…はい。花蘭様。この東国を…共に守っていきましょう」
風にも伝わってしまったのか、王に忠誠を誓うのではなく、花蘭に忠誠を誓った。
再び深く頭を下げ、忠誠を誓った風の姿を見下ろす。
これが、王と護衛の距離ー…
こんなに遠くなってしまった、風との距離。
もう、縮まることはないー…