姫は王となる。
「王様…城に戻られますか?」
皆持ち場につき、二人きりになると風がそう聞いてきた。
「…いや…いい」
ショックを受けている場合ではない。
村で生き残った3人に、襲われた時の状況を聞かねば…
風に寄りかかっていた身体を起こし、馬から降りようとする。
すると、すばやく風が馬から先に降り、手を差し伸べた。
"…さすが"と思いながらもその手をとり、ゆっくりと馬から降りた。
「王様。絶対、私の側を離れないでください。安全を確保するため護衛兵を各持ち場に立たせていますが、何が起こるかわかりません」
真剣な表情で話す、風の表情をじっと見てー…
「…あぁ」
顔を背けながら、短く返事した。
こうして風が護衛として、外で任務する姿を見るのは初めてかもしれない。
小さい頃からずっと側にいて、私を守ってくれていたけどそれは、城の中や安全が確保された街だけ。
護衛しながらも、穏やかな笑顔を見せてくれた。
けど今の風は、全身で警戒しているのがわかる。
表情を緩めることなく、五感を研ぎ澄まし常に周りを見ている。