姫は王となる。


「王様っ」

風が止める声が聞こえるが、聞こえないフリをして近付く。


距離を縮めていくと、さっきの場所からは見えなかった無数の傷がはっきりと見える。

顔には細かい傷が無数とあり、足は裸足で赤くなっていて、乱れた髪は逃げ惑ったんだろうと思わせる。


「…今さら来ても遅いんだよ」

ドクン!


一番大きな女の子がボソッと言った言葉に、心臓の脈が深く打った。

女の子たちに近付いていた足が、ピタリと止まった。


「お前っ…王様に向かって何て口の聞き方を!!」

「よせ!」

副長が女の子を叩こうとしているのを、大きな声で止めた。


「う…うわぁーん」

その声に驚いたのか、一番小さな女の子が泣き出してしまった。



「ふっ…」

真ん中の女の子も泣くのを我慢しているのであろう、俯き肩が震えている。




どうして、こんなことにー…



「…王様のせいなんだ」


ドクン!


「王様に力がないから私たちの村が襲われた!!お父さんやお母さんが殺されたのは、王様のせいだ!!!」


一番大きな女の子が泣き叫びながら言った。



< 94 / 247 >

この作品をシェア

pagetop