姫は王となる。
「王様っ」
風が止める声が聞こえるが、聞こえないフリをして近付く。
距離を縮めていくと、さっきの場所からは見えなかった無数の傷がはっきりと見える。
顔には細かい傷が無数とあり、足は裸足で赤くなっていて、乱れた髪は逃げ惑ったんだろうと思わせる。
「…今さら来ても遅いんだよ」
ドクン!
一番大きな女の子がボソッと言った言葉に、心臓の脈が深く打った。
女の子たちに近付いていた足が、ピタリと止まった。
「お前っ…王様に向かって何て口の聞き方を!!」
「よせ!」
副長が女の子を叩こうとしているのを、大きな声で止めた。
「う…うわぁーん」
その声に驚いたのか、一番小さな女の子が泣き出してしまった。
「ふっ…」
真ん中の女の子も泣くのを我慢しているのであろう、俯き肩が震えている。
どうして、こんなことにー…
「…王様のせいなんだ」
ドクン!
「王様に力がないから私たちの村が襲われた!!お父さんやお母さんが殺されたのは、王様のせいだ!!!」
一番大きな女の子が泣き叫びながら言った。