愛を知らない君へ


そんな私の願いも虚しく、

家には明かりがついていた。

あぁ、今日も始まってしまうのか


私は1つ深呼吸をすると、家の中に入っていった。

ここから私は感情を殺す

人形のように

時が過ぎるのをただただまつ。


「ただいま。」


小さな声でそう言う


あわよくば気づかないで。


そんな願いを込めながら。


だけど、そんな願いも叶うはずがなく、あの人がリビングから出てきた。


「遅かったなぁ
どこ行ってたんだぁ?」


酔っているのか随分と機嫌が良さそうな声。


あぁ、嫌だな


顔を見るだけで、声を聞くだけで吐き気がする


「どこでもいいでしょ」

私は無表情で返す


そんな私が気に入らなかったのか、


あの人は顔を顰めて、こう言った


「お前のせいで俺の幸せが壊れたんだ!
お前は黙って俺の言うことを聞いていればい
いんだよ!!」

そう言うと、私に近づいてきて、お腹を殴ってきた


「かはっ」


鳩尾に入り、つい声が出る。


いけない。人形は喋らない。


痛みも感じない。


もう一度深呼吸をして完全に感情を殺す。


それからもあの人は私を殴り続けた


殴り、蹴り、煙草だって押し付けてくる


だけど私は何も感じない


こんな奴のために泣いたりしない


早くこの時間が終わればいい


それだけを思ってただただ時間が過ぎるのを待つ


どれくらい経っただろうか


空が少し明るくなってきた頃。


ようやく終わった。


あの人は、


「とっとと部屋に戻れ。」


それだけ言って、また酒を飲み始めた。


そして私は動かない体に鞭を打ち、部屋に戻った
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