お日様のとなり
おばあちゃんの声で目を覚ます。
こすった目で確認すると、そこはもう見慣れた和室。
陽に当たる畳の匂いがして、ああ夢だったのかと、そっと胸を撫でおろした。
「みあ、起きたのかい?」
「ごめん、おばあちゃん。私、寝ちゃってた……」
「夏休みなんだから、たまには良いさね」
おばあちゃんの優しい声に甘えて、いつの間にかおばあちゃんがお腹に掛けてくれていたバスタオルを引っ張り上げる。
目を閉じてもうひと眠り……って、ん?
壁掛け時計に目を向けると、針が指し示す時刻にはっとする。
「よ、4時……!」
大変だ。
四つん這いになってジタバタする私を見て、おばあちゃんはやれやれと溜め息をついた。
「何をそんなに慌ててるんだい。花火の時間までまだずいぶんとあるだろう」
「違うのおばあちゃん」
おばあちゃんには私がイチくんと花火を見に行くことを話していないから、私が一人で出掛けると思っている。
約束の時間は5時。
しかも今日の待ち合わせ場所はここだ。
イチくんが迎えに来てくれる。
イチくんの家と私の家は1駅違いだけれど、歩くと然程距離が離れていないらしい。
ということは、あと1時間。
自分の部屋に戻って、押し入れを開ける。
そして固まった。
えーっと、花火大会って何を着て行けばいいのだろう……。