お日様のとなり
その時、スマホから着信音が聞こえた。
相手はイチくんだったので、電話に出るより早いと思った私は玄関に走った。
ガラガラと引き戸を開けると、そこに立っていたイチくんはスマホを耳にあてたまま驚いた顔をして固まった。
「え?あ、え……?みあ?」
「みあです……」
私の他に誰がいるというのだろうか。
あまりに驚かれるので、自分の格好に急に自信がなくなってきた。
「……やっぱり、変だよね」
おばあちゃん、ごめん。
浴衣はとても素敵だけれど、浴衣を着た私はやっぱりそうではなかったようです……。
しゅんとして引き戸に身体を隠すと、イチくんは門戸に慌てて飛びついた。
「へ、変じゃない!」
「え?」
「ただ、びっくりして……。そんなかっこして出てくるとは思わなかったから」
「……だよね」
「え?ちょ、待って。なんか勘違いしてない?」
そんな顔を見せといて、何が勘違いだと言うんだろう。
お世辞を言われるよりも、ここではっきり言ってもらえたほうが有難いのに。
「お願いだから、着替えないで」
「どうして?」
「どうしてって、可愛いからだよ!って、こんなとこで何言わせるんだよ」
「浴衣がでしょう?」
「はあ?」