お日様のとなり
イチくんを居間に案内して、台所にお茶の用意をしに行こうとしていたらおばあちゃんに止められた。
「あんたはそんなことしなくて良いから、むこうでさっさと用意しておいで」
そんなことって、イチくんはお客さんなのに。
「みあ、気にしなくて良いから行っておいでよ」
イチくんまでそんなことを言ってくる。
おばあちゃんは近くに来たイチくんをまじまじと見つめると、「ほお」と呟いた。
「おや、アンタ随分と男前だねえ。ちょっとこっちおいでな」
「おばあちゃん、イチくんに何するの?」
「心配せんでもとって食いやしないから、安心おしよ」
言いながら、おばあちゃんにぐいぐい背中を押して追いやられるので、私は渋々部屋に向かった。
浴衣と一緒におばあちゃんに借りた巾着袋に必要な物を詰めていく。
あ、髪も少し上げた方が良いかもしれない。
折り畳みの鏡の前で正座をして髪を束ねていると、向こうの部屋から話し声が聞こえてきた。
「こんな細い腰して、もっと食べなきゃ駄目だよ」
「痛って……!」
「ほら見てみな。死んだじいさんの若い頃にそっくりだ」
「そりゃどーも。ばあちゃんこそまだまだイケてるよ」
「何言ってんだい。年寄り褒めたって何も出て来やしないよ」
な、何してるんだろう……。
おばあちゃん、イチくんのこと気に入ったみたいだけど。
やっぱり少し、いやかなり心配だ。