お日様のとなり
私と手がぶつかったのが嫌だったのか、それとも私と花火大会に行くのが憂鬱なのか、それとも……いや全部か。
イチくんの変な行動を見ていると、なんだかめげそうになってきた。
イチくんの隣をこうして歩けていることだけでも十分奇跡に近いのに、私はどんどん欲張りになっている。
私は溜め息をつきながら俯いた。
「ああ、もう。変な誤解されたくないからこの際正直に話すけど」
覚悟を決めたようなイチくんの声に、息を飲む。
「俺今めっちゃ緊張してるから。みあが浴衣着てるのとか、髪の毛上げてるのとか、今から一緒に花火見ることとか、全部。だからたまに変な態度取るかもしれないけど、出来れば全部スルーして」
「……は?」
……それだけ?
イチくんが意を決して吐いた言葉。
それにも関わらず、私はあっけに取られたように目をパチパチと瞬かせる。
「は?って……何、もしかしてカッコ悪すぎて呆れてる?」
「いや、だって……予想の斜め上を行かれたというか」
「予想って、みあ何考えてたの?」
イチくんが眉間を皺寄せて私を見つめる。
だけどもう、そんなことはどうでも良くて。
なんだ、そうだったのか……。
なんだ、なあんだ……。
気が抜けると頬の辺りがピクッっと引き攣りそうになったので、咄嗟に手で隠した。
……良かった。