お日様のとなり

ちょ、ちょっとこれ以上押されると……。

「わ……っ?!」

背中でなんとか踏ん張っていた身体が、最後の一押しであっけなく崩れてしまう。

不可抗力にも関わらず、私の顔は誰かも分からない人の背中に埋もれた。

苦しいし、嫌だなと思いながらも、動き始めた電車の力にもう身動きが取れない。

その時、誰かの手が腰に回ってきて、くるりと反対を向かされた。

その瞬間、ふわっと心地良い匂いでいっぱいになって、嫌だと思っていた感情が一瞬で消えた。

「ごめん、すぐだから」

小声で囁くのはイチくん。

私が苦しそうにしているのに気付いてくれたのだろうか。

すっぽりとイチくんの腕の中に収められて、私は無言で頷く。

確かに、苦しいのはなくなったけど、これはこれで……。

どくん、どくん、と大きく聞こえるのは一体どっちの心臓の音だろう。

たぶん、きっと、私のだよね……?



学校の最寄り駅に着く。

電車から降りてもまだふわふわとしている感覚はまるで夢の中みたい。

「みあ、しっかりして」

「あ、はい……」

イチくんの声にぼやけた頭をしゃきっとさせる。

すると目の前は、人、人、人。
人がたくさん……。

あれ?イチくんはどれ……?




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