お日様のとなり

声のした方に顔を向ければ、どこかで見たことのある男の子がイチくんに話しかけていた。

じっと見ていると、その人は私に視線を向ける。

「え、垣谷さん?」

「はい、垣谷です……」

名前を呼ばれて、つい電話に出る時のような返事をしてしまった。

誰だったっけ、この人……。

せっかく私にも気付いてくれたのに、名前を思い出せなくて、申し訳ない気持ちになる。

「俺だよ俺。サッカー部の三浦、ってその顔もしかして知らない?」

三浦くんというらしい。

名前に心当たりはなかったけれど、サッカー部と言われてピンときた。

「たしかイチくんに負けた人……」

部活の途中イチくんを試合に誘って、その結果負けて悔しそうにしていた人だ。

たしかカメラでも何枚か写真を撮ったはず。

だから見覚えがあったのか。

「そうそう、そうだけど……その覚え方微妙!」

苦笑いされてしまった。

言い方を間違えてしまっただろうか。

「ごめんなさい。名前、覚えます」

そう言うと、三浦くんはニッと歯を見せて笑った。

「三浦光輝ね!ちなみにイチとは同じクラスだから、よろしく」

「覚えなくていいから、こんなヤツ」

「は?おまっ、モテるからって垣谷さんにまで手出しやがって。マジで羨ましい奴だな」

三浦くんがイチくんの肩を組んで後ろを向いてしまったので、最後の言葉は私には聞こえなかった。

イチくんとは仲良しみたいだし、名前覚えておかないと……。
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