お日様のとなり

それからも何人もの人がイチくんに声をかけていく。

知ってる顔の人もいれば、全然見たことのない違う学年の人まで。

イチくんが声を掛けられる度に、その人たちに近くにいる私は変な視線を向けられている気がする。

私はだんだん自分が小さくなっていくような感覚に襲われて、隣を歩いていたはずのイチくんとの距離はどんどん離れていった。

「……みあ?」

立ち止まって、イチくんが振り返る。

距離を縮めないまま、私もその場に立ち止まる。

イチくんの声が辛うじて聞こえるくらいの距離がもどかしい。

そのくせに、自分からは近づいて行くことが出来ない。

一緒にいられるだけで良かったはずなのに、私は今、とても我が儘なことを考えている……。

「それ以上離れたら逸れちゃうから、あんまり見えないところにいないで」

困ったように笑うイチくん。

困らせたいわけじゃないのに、私はそれでも動くことが出来ない。

痺れを切らしたようにイチくんが近づいてくる。

心臓が、トクンと跳ねた。

黙って目の前のイチくんを見上げていると、イチくんは視線を外して遠くを見た。

視線の先には誰がいるんだろう。

誰を探しているんだろう。

煩いくらいだった心臓の音が、熱いくらいだった体温が、急降下していく。
< 115 / 207 >

この作品をシェア

pagetop