お日様のとなり
それからも何人もの人がイチくんに声をかけていく。
知ってる顔の人もいれば、全然見たことのない違う学年の人まで。
イチくんが声を掛けられる度に、その人たちに近くにいる私は変な視線を向けられている気がする。
私はだんだん自分が小さくなっていくような感覚に襲われて、隣を歩いていたはずのイチくんとの距離はどんどん離れていった。
「……みあ?」
立ち止まって、イチくんが振り返る。
距離を縮めないまま、私もその場に立ち止まる。
イチくんの声が辛うじて聞こえるくらいの距離がもどかしい。
そのくせに、自分からは近づいて行くことが出来ない。
一緒にいられるだけで良かったはずなのに、私は今、とても我が儘なことを考えている……。
「それ以上離れたら逸れちゃうから、あんまり見えないところにいないで」
困ったように笑うイチくん。
困らせたいわけじゃないのに、私はそれでも動くことが出来ない。
痺れを切らしたようにイチくんが近づいてくる。
心臓が、トクンと跳ねた。
黙って目の前のイチくんを見上げていると、イチくんは視線を外して遠くを見た。
視線の先には誰がいるんだろう。
誰を探しているんだろう。
煩いくらいだった心臓の音が、熱いくらいだった体温が、急降下していく。