お日様のとなり

「……じゃあ、離れないようにして」

「えっ?」

イチくんが驚いた顔をして、私を見た。

何が起きたのかわからない。

私は今、何を口走ったのだろうか。

私は……。

「…………え?」

はっとした私は、両手で口元を押さえる。

今のって、私が言ったの……?!

自分で自分の行動が信じられない。

無意識に私はなんてことを言ってしまったんだろう。

イチくんは気まずそうにまた余所見をした。

視線が合わないまま、手の平にひんやりとした感触が伝わる。

「今のは、みあが悪い……」

言葉の意味が分からなくて、私の視線は繋がれた手とイチくんの顔を行ったり来たり。

「こうするしか思いつかない。頭悪くてごめんね」

淡々と、でも少し不貞腐れたようなイチくんの声がして、そっと手を引かれた。

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