お日様のとなり
私の少し前を、ちょうど追いつけないくらいの微妙な大きさの歩幅と速度で歩くイチくん。
だけど手がしっかりと握られているから、離れることはない。
後ろからイチくんの襟足らへんを見つめていると、あちこちに吊るされている提灯に照らされて、ふとイチくんの耳が赤くなっていることに気付いた。
もしかして……。
「う、わ……っ」
そう思った時だった。
下駄が片足脱げて、前につんのめりそうになってしまった。
イチくんが手を離さなかったおかげで、転倒するまでは至らなかったけど。
「ご、め……」
息が上がって上手く言葉にならない。
慣れない下駄なんて履くもんじゃないなと思った。
イチくんは何も言わずに、私が落とした下駄を拾いに行ってくれた。
しゃがみ込んだまま、砂が付いてしまった私の足を手ではたき落とすと、そのまま下駄を履かせてくれた。
「ごめん……」
旋毛を見せたままのイチくんがポツリと何か呟くけれど、周りの人の声であまりよく聞こえない。
というか、この構図……周りからどういう風に見えているんだろうか。
珍しいものを見るように、人がこちらに顔を向けながら通り過ぎていく。