お日様のとなり

痛いくらいの視線が気になって、私もしゃがんでイチくんと目線を同じにした。

顔を上げたイチくんと目が合った。

「……イチくん、顔真っ赤だよ」

「言うなよ……」

分かってるから、と付け加えて。
イチくんは腕で顔を隠した。

隠し切れていないけど。

隙間から見える照れたような表情が、なんというか……。

「可愛い」

そんな例えしか思い浮かばなくて、口に出してみる。

だけど。

「嬉しくない」

ピシャリと言い返されてしまった。
褒めたつもりなんだけど、喜んでいないみたいだ。

「……可愛いのはみあの方だよ」

少しだけ顔を上げて目を合わせてくるイチくんは、やっぱり可愛く見えてしまう。

今度こそ本気で怒られそうだから、心の中だけに留めておくけれど。

私なんかより全然、可愛い。

それこそ無表情で可愛げのないことしか言えない私なんかじゃ、釣り合わないくらいに。


そして、立ち上がったイチくん。
私もつられて立ち上がる。

私にちらりと移る視線は、何を言いたいのかわからない。

口元に拳を当てて一呼吸置いたあと、目の前に差し出された手の平。

これは……。

「離れないように」

まるで手の平の意味を説明するような言い方。

「イチくん、照れてる」

「だから言うなって」

どうしよう、イチくんの一挙一動に心臓が暴れ出す。

最近、私の心臓がおかしいのって、もしかしたらイチくんが原因なのかもしれない。


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