お日様のとなり

手を繋いで歩き出す。

イチくんの歩幅はさっきよりも小さく、私の歩くスピードに合わせてくれている。

嬉しい。

イチくんと肩を並べて歩くことが嬉しい。

イチくんと手を繋いでいることが嬉しい。

イチくんの色々な表情が見られることが嬉しい。

だけどね、そんな嬉しさと相反して、時々息が出来なくなるくらいに苦しくなるんだよ。

でも嫌じゃない。

苦しいのに、不思議と辛くはない。

なんて、こんなこと言ったら、イチくんはどう思うだろう。

笑うかな。

バカにするのかな。

それとも、気持ち悪いって嫌われるかな。

あ、それはちょっと嫌だ。

やっぱり言えない。

言えないから、もう少しこのまま……。

この気持ちは自分の心の中の箱に、大事にしまっておくことにする。


「みあは何食べたい?」

「……」

両サイドにぎっしりと並ぶたくさんの出店。

たこ焼きやかき氷、それに聞いたこともない名前の食べ物まで、本当にたくさん……。

「……わかんない」

「ははっ、なんだそれ」

でも、そんな中で一つの店に目が留まる。

「金魚すくいか。やる?」

「えっ?」

ふるふると首を横に動かす私に、イチくんはあれ?と首を傾げた。

「やりたいから見てたんじゃないの?」

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