お日様のとなり
放課後になった。
帰宅部の私はいつもは学校が終わるとまっすぐ家に帰る。
けれど、今日は違う。
「みあっ、やっぱり私もついて行く!」
同じクラスの前川苑実に横から抱き着かれて、よろよろと机にしがみつく。
「大丈夫だよ。苑実は試合前で今が大事な時期なんだから、少しでも早く行ってみんなをまとめなきゃ」
「だって心配じゃん!みあが部活に入るなんて!」
「苑実……私も実は、ほんの少しだけ心配……」
「みあ~……」
小さく呟いてみれば、苑実は眉を下げて正面から私の顔をじっと見つめると、またひしっと抱きしめられた。
私といつも一緒にいてくれる苑実は中学の時からの友達。
笑わない私をいつも気にかけてくれる、私のお姉さんみたいな子なんだ。
苑実が一緒に写真部についてきてくれるなんて、本当はそれ以上に心強いことはない。
でも、苑実の所属しているうちの高校のバスケ部は強豪校として有名だから。
夏の大きな大会に向けて練習や話し合いなんかで忙しい日々を送っている姿を、私は陰ながら応援していた。
とはいっても、実際は何もしてあげあられていないんだけど。
せめて迷惑だけは、かけたくない。
同じバスケ部の人たちに迎えに来られた苑実は、後ろ髪をひかれるように教室を後にした。
そんな苑実に見えなくなるまで手を振ると、帰り支度をしながら、ふとグラウンドに目を向ける。
野球部が大勢で走る姿やかけ声、サッカー部が早くもボールを蹴る音。
遠くの方では、音合わせをする吹奏楽の音色も聞こえる。
きっと誰もが一生懸命で、なにかしらの目標を抱えて頑張っている。
「よしっ。行こう!」
一人残った教室で軽く気合を入れて、私は写真部の部室へと足を動かした。