お日様のとなり
「そういうわけじゃなくて……」
小さな無数の金魚たち。
これだけいれば決して広いとは言えない水槽の中で、あちこち方向を変えて絶えず泳ぎ続けている。
その様子は可愛いのだけど……。
「お父さん、ありがとう!」
「大事に飼うんだぞ」
「うん!わーいわーい!」
小学生くらいの男の子とそのお父さんが私の横を通り過ぎていく。
男の子の手には透明な袋。
その中にはわずかな水と小さな金魚が一匹。
ああやって家に連れて帰るのか。
喜びで溢れている子どもに対して、金魚は本当に幸せなのかな。
無理やり狭い所に入れられて、全く知らない世界に連れていかれる。
あれはまるで……私みたい。
人混みの中に消えていく親子の後ろ姿をじっと眺めていると、「みあ……?」イチくんの声が聞こえて振り返る。
するとそのまま手を引かれて。
「おじさん、2人分ね」
「あいよ」
お店の人にイチくんが小銭を手渡した。
代わりにくれたのは、紙の張られた網と器が2つずつ。
「ほら、ここにこうやって少しだけ水を入れるんだよ」
「あ、私は……」
やるなんて言ってないのに……。
楽しそうなイチくんの横顔に一つ息を吐いて、隣にしゃがみ込んでみる。
水面を見つめると、ちょろちょろと金魚たちが集まってきた。