お日様のとなり

近くで見ると、全部同じだと思っていた金魚にもそれぞれ柄や形、大きさが違うようで、とりあえず持たされた道具を手に、素早い金魚を目で追い続ける。

「あー、破れちゃった!」

向かい側では残念そうな声を上げて、破れた網を見つめる子どもがいた。

破れる。
そっか、簡単に壊れちゃうんだ、この網……。

ふと隣に視線をやってみると、イチくんの器にはすでに4匹の金魚が。

「イチくん上手……」

「得意な方じゃないんだけど、なんか今日は調子が良いのかも」

話しながら、視線はずっと水面から離れない真剣なイチくん。

私も真似して、そっと水面に網を浸してみた。
じわじわと水が浸みて色を変えると、なんだかさっきよりもぶよぶよになってしまった。

金魚が自分から網に近付いてきたので、ひょいっとすくい上げてみる。

けれどバシャンと音を立てて金魚は網を通り抜けると、また水槽の端っこに向かって泳いでいった。

「おじさん、お返しします」

「あいよ。ねーちゃん下手くそだったな!金魚すくいってのは、もっと水面ギリギリを狙ってだな、こう手首のスナップを」

道具を返すと、お店のおじさんが上手なやり方をレクチャーしてくれたけど、あまりよく分からなかった。

……難しい。

金魚は逃げるのに必死だ。

だけど掬う方も真剣にならないと、簡単には取れないんだ……。

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