お日様のとなり
そのはずなのに……。
私の手にはいつの間にかあの男の子が持っていたのと同じ透明の袋が。
「イチくん、凄かったね」
気付けばイチくんの器は2つ目に突入していて、合計にすると何匹すくい上げたのか数えきれない程。
もはや名人の域……。
そして、何匹すくってももらえる金魚の数は変わらないということも初めて知った。
「これ本当に私がもらっちゃっても良いの?」
「いいよ。みあの為にやったんだし」
「そうなんだ……」
私の為にくれたのだから、ここは「ありがとう」と言わなければいけないところなんだろうけど。
複雑で、なんとも言えない気持ちで、袋の中の金魚をつんと優しくつついてみる。
「いらなかった?」
「……ううん、違うの。でも、金魚は私に連れて帰られてかわいそうだなって。たった一人でいきなり知らない所で生かされるより、あのままあそこで泳いでいた方がよっぽど幸せだったんじゃないのかな」
私の言葉に黙って耳を傾けていたイチくんは、ふっと表情を柔らかくして口を開いた。
「みあは優しいな。良かったな、お前。こんな優しい主人に連れて帰ってもらえてさ」
金魚を覗き込んで、イチくんは私と同じようにそっと袋に触れた。