お日様のとなり

苑実の試合の応援に来たはずなのに、どうして大蔵が試合に出る雰囲気になっているんだろうか。

フロアの脇には、女子バスケ部の子たちの姿も見えるけど、話しかけにいけるような状況じゃないしな……。

その時。

「てゆーか、西野くんが手振ったのってこの子にじゃない？」

一人の女の子の言葉に、その場にいる女子生徒たちの視線を一斉に浴びてしまう私。

げ……、バレた……。

「この子あれじゃん。無表情姫って呼ばれて有名な」
「は？なんでこんなとこにいんの？」

遠巻きにそんな噂をする声も聞こえて、今すぐにでも逃げ出したい。

でも、前も後ろも私のことを睨む女子たちに囲まれていて、今にも襲い掛かってきそうな予感すらしている……。

聞こえないふりをしてじっと黙っていると、一人の女の子が私に近付いてくる気配がした。

「西野くんに手振られたのに振り返さないとか何様？無表情の裏であたしらのこと笑ってたんでしょ？姫なんて呼ばれてるからっていい気になってんじゃねーよ、ブス！」

私、笑ってなんかないのに……。

恐怖で心臓がドクドクと暴れ出す。

振り上げられる手に目を瞑った。

けど、次の瞬間。

「わーお、すごいの撮れちゃった」

聞こえてきた声に、少しずつ落ち着いていく鼓動。

だってこの声は……。