お日様のとなり
暫くすると、体育館に試合開始のホイッスルが鳴り響いた。
カメラを構えるイチくんに倣って、私もデジカメを構える。
まんべんなく全体の写真を撮っていくけれど、デジカメではズーム機能も限界があって、なかなかうまく撮ることが出来なかった。
部室に行けば、一眼レフのカメラを借りることが出来るだろうか。
「イチくん、部室の鍵って職員室に行けば借りられる?」
「……なんで?」
「デジカメじゃ上手く撮れなくて」
「別にいいんじゃない?」
……おかしい。
イチくんが写真に対してそんなに投げやりになるなんて。
私が撮る写真がたとえ自分とは関係なくても、今までなら親身になってくれていたのに。
「みあは西野に頼まれて来たんだろ?だったら応援してやれば良いんじゃない?」
「大蔵には、何も頼まれてないけど……」
どうしてここで大蔵の名前が出てくるんだろう。
考えていると、イチくんが目を丸くしてカメラから顔を上げた。
「……西野の応援に来たんじゃないの?」
「私は苑実に誘われて来ただけだから、大蔵は関係ないよ。ただ記録係としてイチくんのこと手伝えたらと思って……」
「……俺が持ってる。部室の鍵」
イチくんはポケットから出した鍵を私の手に乗せると、溜め息を吐いてカメラを構え直した。
機嫌が悪いように見えたのは、やっぱり勘違いだったのか。
首を傾げてイチくんを一瞥すると、私は早足で部室に向かった。