お日様のとなり
私が再び体育館に戻って来られたのは、男子の後半戦が終わりかけていた頃だった。
帰りが遅いことを心配してくれたのか、私に気付いたイチくんはすぐに来てくれた。
「みあ、何かあった?もしかしてさっきのヤツらに」
私はイチくんの言葉に首を振って答えた。
「そっか」
安堵したように眉を下げるイチくん。
私はこの表情を見て、今までどんな顔をしていたのだろう。
どんな風に胸を弾ませていたんだろう。
苑実が言ったことが悪いわけじゃない。
でも、分からなくなってしまった。
「みあ?」
この人の前で、私はどうやって息をしていた……?
何も言わずにカメラを構える私をイチくんは隣からしばらく見つめていた。
だけど、何も言い返すことが出来ない。
イチくんの顔をまともに見ることも、もう出来ない……。
「試合、終わりそうだから」
カメラから下にずらした目は、イチくんの足元しか見えない。
やっと声に出来たのは、そんな素っ気ない言葉。
ガラガラと音を立てて何かが崩れていく。