お日様のとなり
……ああ、いいなぁ。
思い浮かべた光景に胸が締め付けられる。
なんとなく居た場所が、知らないうちに自分の中でこんなにも大きな存在になっていたなんて。
聞こえるのは自分の心臓の音。
たったそれだけ。
あんなにも賑やかだった部室に、たった一人取り残されたような気分。
部室の中をゆっくりと歩いて回り、一つ一つを目に焼き付けていく。
ふと、アルバムが目に入って足が止まる。
いつの日か、私が足を怪我した時に真央先輩が見せてくれた物だ。
一冊手に取って、広げてみる。
そして、その中で一番惹きつけられる写真はやっぱりこれだった。
女の子が夕陽に照らされている写真。
窓から差し込んでいる光が、私の影を随分と長くしている。
もうじき夕暮れだ。
この写真が撮られた時間と同じ。
イチくんがファインダー越しに女の子を見つめるシーンが頭の中に浮かび出す。
この女の子は一体誰なのだろうか。
知りたくても、もう自分にそれを知る手段はきっと残されてはいないのだろう。
答えはもう決まっていた。
私は今日で、ここに来るのを辞める。
私がここに居続けることで感情を、表情を取り戻すことになるのだとしたら、その結果これまで信じてきたものがなくなってしまうのなら、もう意味がない。
アルバムを戻して、そっと部屋の鍵を閉めた。
そして最後に”写真部”と手書きで作られた表札をしっかりと目に焼き付けて、踵を返した。