お日様のとなり

「ちょっと、大蔵……?」

「みあは黙ってろ」

険悪な雰囲気に口を挟もうとした私を、大蔵はさらに後ろへ追いやった。

イチくんとの距離がどんどん遠くなる。

大蔵の背中越しにイチくんの声が聞こえた。

「何って、同じ写真部の仲間……だけど」

心臓がぎゅっと縮まったような感覚に違和感を覚えた。

どうしてだろう。
イチくんが言ったことに、何も間違いはないのに。

誰にも言わずに写真部を辞めると決めたから、少なくともイチくんの中ではまだ、私は同じ写真部の一員。

だから、間違ってはいない。

それなのに……。

私がショックを受けることなんて、何もないはずなのに。

顔が上げられないのはなんでだろうか。

無意識に大蔵の背中に隠れたのは、きっとイチくんの顔を見えないようにするためだ。

だから、分からなかった。

「みあのこと何も知らないくせに、簡単にこいつの傍にいられると思うな」

大蔵の言った言葉で、イチくんがどんな顔をしていたのかなんて。

私には到底、分からないことだった。


< 138 / 207 >

この作品をシェア

pagetop