お日様のとなり
「俺が一番近くにいたはずなのに、お前いつの間にそんなになっちまったんだよ」
大蔵が何のことを言っているのか分からなかった。
だけど、大蔵はどこか苦し気な表情をしていて、私は眉を寄せた。
「……なんでお前がそんな顔してんだよ」
大蔵が手を伸ばして、親首で私のオデコをぐりぐりと刺激する。
痛さに顔を歪めると大蔵はふっと小さく笑った。
そうだ、その顔。
大蔵は、そっちの方がいい。
「だって、大蔵にはいつも笑っていてほしいから」
オデコをさすりながら小さく呟けば、大蔵は一瞬目を開いて顔を横に向けた。
「……俺だって、お前に笑ってほしいよ」
分かってるよ。
昔から、大蔵がおかしなことばっかりに私を付き合わせるのは、私のことを笑わせようとしてくれてたからだって。
小さな体で本当は一生懸命に私のことを励ましてくれようとしてたんだって。
それに応えることが出来なかったけど、その気持ちにどれだけ救われてきたのだろう。
でも、やっぱり……。
「私には、無理だよ」
胸に突き刺さる棘はなかなか綺麗に取れてはくれない。
これからもきっと。
「知ってるよ」
「じゃあなんで、そんなこと……」
「お前のことが好きだからに決まってんだろーが」