お日様のとなり
数秒の間を置いて、私もだと頷いた。
ひぐらしの声が止んで、また風が吹く。
さっきよりもまた少し、涼しくなったような気がした。
「……帰るか」
「え、あ、うん……」
前を歩き出す大蔵に駆け足で近寄って、斜め後ろを歩く。
ちらりとこちらを振り向いた大蔵は、またすぐに顔を前に戻して。
「そっか。そうだよな……」
独り言を呟いた。
小さすぎるその声は、私には届かない。
通りかかった掲示板には、当たり前だけど花火大会のポスターはもうそこには貼られてはいなかった。
見上げた夏の夜空に、カメラを向けることももうないのだろう。
歩く度にキシキシと音を立てる心臓の音に、私はずっと気付かないふりをした。