お日様のとなり
このまま歩いていれば会話が聞こえてきてしまいそうで、距離を縮めないように歩くスピードを遅くした。
自分の意志でそうしたはずなのに、だんだんと離れていくイチくんの姿に胸がぎゅっとなるなんて、自分勝手にも程がある。
俯いて廊下の端っこを歩いていると。
「は?お前のクラスまだこんなとこ歩いてんの?」
「大蔵……」
追いついてきたらしい大蔵が眉根を寄せて私を見下ろしていた。
よく見てみると、周りには後から体育館を出てきたクラスの人ばかりで。
変な視線が集まってきているのは気のせいだろうか。
「あー、この子あれじゃん!何つったっけ?」
「無表情姫だろ。笑わないって言われてる」
「ああそう!それそれ!つか、近くで見たら結構かわいくね?」
大蔵と一緒に歩いていた人たちに囲むように言われて、小さくなる私。
陰で言われるのには慣れているけれど、面と向かって言われると少し怖い。
逃げてしまいたいけど、走ればイチくんたちに追いついてしまう。
それは、困る……。
「お前らそれ以上言ったら絞め上げんぞ」
その時、いつもと違うトーンの大蔵の声が聞こえて、私を囲っていた男子の顔がみるみる青ざめていく。
「おいおい大蔵、マジになんなって」
「悪かったって。お前こういうの嫌いだもんな」