お日様のとなり
午前中のテストはあっという間に終わって、解放感から教室が一気にザワつき始める。
いつもテスト終わりには笑顔で近寄ってくる苑実は、机の上に突っ伏して撃沈状態。
今のテスト、あんまりだったのかなぁ……。
今日は学校が午前中だけだから、ホームルームが終わったらこの後私はまっすぐ家に帰る。
放課後を楽しみにしていたのが、夢だったみたい。
でもそれも、写真部に入る前に戻っただけのこと。
たった1カ月だけのこと。
大丈夫、ちゃんと戻れる。
「みーあちゃーん、終わったねえ。学校もテストも何もかも終わったねえ」
「……うん?そうだね」
苑実は笑っているけど、生気を失ったように見えるのは私だけ?
「あたしこれから部活行くけど、みあも行くよね?」
「今日は帰ろうかな」
「え、帰るの?」
珍しい、という眼差しを向けられて言い訳に迷っていると。
「みあ」
廊下の方から名前を呼ばれた。
弾みそうになる胸を押さえるのにいっぱいで、目をぎゅうっと瞑る。
振り返らなくたって分かる。
この声は。
「みあ、呼ばれてるよ?安藤伊智に」
聞き間違えるわけがない、イチくんの声。
振り返ればきっと、いつもみたいに教室のドアの所で私を待ってくれているイチくんがいる。
私の手を引いて、また、あの大好きな世界に引っ張って行ってくれる。
でも……。