お日様のとなり
黙って腕を引かれ続けて、着いたのは体育館の裏側。
「悪い」
「なにが?」
「いや、こんなとこまで連れてきて」
部活生以外人が来ることのないこの場所は、今は私と大蔵の2人だけ。
換気の為に開けられた小窓からは、体育館で準備運動をする足音や声が微かに漏れて聞こえてくる。
「お前さ、」
ぽつり、大蔵が言葉を紡ぐ。
どこからか甘い金木犀の香りがして、2人の髪を同時に揺らす風に私は目を細めた。
「この間、俺がお前に好きだって言ったの覚えてるか?」
「覚えてるよ?」
夏休みにバスケ部の応援に行った帰りのこと。
私はそれに頷いた。
大蔵と私は小さな頃から一緒にいて、兄妹がいたらこんな感じなんだろうかって思っていた。
大蔵はどう思っていたか分からないけれど、私にとっては家族と同じくらい大切な存在だったんだ。
それは今も私の中では変わらないから。
「やっぱ、みあにはストレートに言わねーと伝わんねえかー」
しゃがんでリュックを抱え込む大蔵。
その声は少し残念そうで、その意味を探るようにそっと顔を覗き込んでみる。
ぱっと顔を上げた大蔵と、至近距離で目が合う。
透き通るような茶色い瞳が揺れて、真っすぐに見つめられる。
その視線に、どうしてか目が離せない。
「……好きだ」