お日様のとなり

「かっきー食べないの?」

ドーナツの食べカスを頬に付けて、キョトンとこちらを見つめる真央先輩。

私は言葉を失う。

どうしてここにいるのだろう。

どうして何事もなかったように私と昼ご飯を食べているのだろう。

どうして部活に来ないんだ、どうして連絡を返さないんだって、もっと罵られると思っていたのに。

「あ、もしかしてこのゴールデンキャラメルクロワッサンドーナツをかっきーも食べてみたいの?仕方ないなぁ。可愛い後輩に免じて一口だけ」

「ま、真央先輩っ」

食べかけのドーナツを笑顔で近づけてくる真央先輩を遮るように、口を開く。

下を向いてぎゅっとスカートを握りしめると、真央先輩は優しい口調で答えてくれた。

「……なあに?」

「どうして、何も言わないんですか?」

真央先輩が空を仰ぐ。

遠くの方で飛行機が飛んでいる音が微かに聞こえた。

ベルトの擦れる音がして、真央先輩がカメラを構える気配を隣でひっそりと感じ取る。

シャッターを切る音は懐かしくて、心が震えた。

「……あたしね、今年の文化祭を最後に、カメラ引退するんだ」

「え……?」

「なんて、大抵の3年は夏休みの大きな試合やらが終わったらどんどん引退してくんだから、ここで大々的に発表することでもないんだけどさ」

引退……。

そうか、3年生は受験があるから、言われてみれば当然のことだ。

部活動というものが初めてだったとはいえ、少し考えれば分かること。

そんな時に、私は……。



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