お日様のとなり
「あ、ごめん。あいつ、安藤伊智っていうんだけど。カメラのこととなると周り見えないことがあって」
「もうイチ!せっかくあんたのめちゃくちゃな勧誘に着いてきてくれたんだから、もっと大事にしな!」
真央先輩がイチくんの近くまで行って、傍にあった雑誌を丸めて頭を叩く。
パコーンと良い音がして、「いってぇ!」とイチくんが頭を押さえた。
「イッチーのカメラに対する情熱は認めるけど、姫にちゃんと色々教えてあげなきゃダメだよ」
「ひ、姫……?」
真央先輩、また私のこと姫って呼んだ……。
私、姫なんて呼ばれるような容姿でも家柄でもないんだけどな。
160センチある私より小さくて、つやつやとしたボブヘアの真央先輩の方がよっぽど可愛い。
真央先輩はぱっちりとした目をさらに大きく開いて、きまりが悪そうに「あはは~」と笑って見せた。
「とりあえず名前教えてもらっていいかな?」
「垣谷みあです。よろしくお願いします」
自分も自己紹介をすると、真央先輩は口元に手をあてて考え込んだ。
「みあっち、みありん、みありーぬ……よし!カッキーね」
どうやら私の呼び名を考えてくれていたらしい。
それにしても”かっきー”なんて初めて呼ばれた。