お日様のとなり
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文化祭の日程が近付くにつれて、準備も大詰め。
毎日が目まぐるしく過ぎていく。
イチくんとは、すれ違うことはあっても、言葉を交わすことはなかった。
話しかけようとすれば、そこにはいつも橋本さんがいるからというのもあるけれど。
それを理由にして、逃げてばかりいる自分が嫌いになりそうだった。
ある日の午後。
先生が不在ということで、授業の時間が文化祭の準備に充てられることになった。
模擬店のポスター作りを手伝っていると、近くで作業をしていた女の子に声を掛けられた。
「垣谷さんって、絵描くの上手なんだねえ」
「そう、かな?」
「うん。このタコの絵とか、可愛くて私好き」
「……ありがとう。あんまり自信なかったんだけど、そう言ってもらえて嬉しい」
必要以上にクラスの人と話をしたことがなかったけれど、勇気を出してそう言ってみれば、一瞬驚いた顔をした女の子はにこりと微笑んだ。
「垣谷さんって今まで近寄りにくい感じだったけど、話してみるとイメージと全然違うね。びっくりしちゃった」
「そうでしょ?うちのみあ可愛いでしょ?」
傍にいた苑実が私の肩に寄り掛かるようにして話に混ざってくれた。
おかげで、どっと場が盛り上がる。
「うちのみあって猫みたいじゃね?」
「そういえば似てるかも」
また一人、また一人と周りに人が増えていって。
「そ、そうかな……?」
「え、垣谷さん満更でもない感じ?そこは怒らなきゃ」
「え?そうなの?」
「ははっ、みあってもしかしてちょっと天然入ってる?」
気付けばクラスの輪の中に、自分もいて。
きっかけは些細なことだった。
少し勇気を出してみることで、一気に目の前の世界が色付いていく。
憧れていたキラキラした世界の中に自分がいるのかな、なんて思うと、とても嬉しくなった。
そうしてその後も文化祭の準備を通して、少しずつクラスの人とも打ち解けていった。