お日様のとなり
ポスターを持って学校内のあちこちを歩き回る。
クラスの宣伝のために貼るのだから、人目に付きやすい目立つ場所が良いだろう。
階段の踊り場や、体育館前、昇降口の前など、行く所はたくさんある。
1学期の頃までは自分からクラスのためにこんな風に動いたり、何かをしたいと思ったことはなかった。
ただひたすら同じような時間を、何もない日々を坦々と過ごしてきた。
それを不満に思ったり、不幸に感じたこともなかった気がするけれど、誰かが喜ぶ顔を想像して行動するのは、とても心地の良いものだった。
目当ての場所に次々とポスターを貼りつけていく。
ふと昇降口から外に目を向けてみると、学校の外にはテントが設置されていて、その下では野外でお店をするクラスの人たちが和気あいあいと準備を進めていた。
ふわりと風が木々を揺らして、靡いた髪を耳に掛ける。
じりじりと照り付けるような真夏の暑さとは違い、どこか秋を感じさせるような柔らかな風の匂いがして、ゆっくりと深呼吸して体内に取り込んだ。
そろそろ教室に戻ろうと、踵を返したその時。
「えー、なんで?あたしの写真使ってくれるって言ってたじゃん」
聞き覚えのある声にどきりとして、前に踏み出した足が止まった。