お日様のとなり

「みあ……?」

心配そうに隣で顔を覗き込んでいる苑実に気が付かないくらい、私はぼーっとイチくんが歩いて行った方向を見つめ続けていた。

せっかく話ができるチャンスだったのに、まともな言葉を交わせなかった。

でも、やっと会えた。
やっと正面から顔が見れた。

そのことが嬉しくて、じんじんと喉の奥が熱くなる。

懐かしいような、切ないような感情がどっと私の中に押し寄せてくる。

諦めなければならないのに、そう思うほど強くなっていく、我が儘な気持ち。

私には大切にしなければいけない人がいるのに。

大蔵のことを傷付けたくないのに。

「みあ、やっぱりまだ好きなんだよね……?安藤伊智のこと」

私は弾かれたように振り返る。

苑実は困ったように笑っていた。

「あたしが羨ましいなって言った本当の理由はさ、安藤伊智のことを見るみあを見てそう思ったからなんだよ」

目にじんわりと涙が浮かぶ。

泣いちゃダメだ。

私が泣く資格なんてない。

だけどもう頭がぐちゃぐちゃで、自分でもどうしたら良いのか分からない。

苑実はそっと背中をさすってくれた。

「……ごめん。みあが決めたことだから何も言わないつもりだったのに、あたし逆に責めるようなこと言っちゃったね」

涙を拭いながら首を横に振る。

苑実が謝る必要なんてない。

そう言いたいのに、言葉が上手く出てこない。

「みあが大蔵のこと大事に思ってるってこと、あたしはちゃんと分かってるからさ。ほら、行こ!自由時間終わっちゃう」

場の空気を変えてくれようと、苑実が明るい声を出すのに、私はこくこくと頷いた。




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