お日様のとなり
「……は?みあ?」
近くで名前を呼ばれて、「へ?」と間抜けな声が出た。
カチッと音がして、目の前に小さな灯りが灯される。
「お前、こんなとこで何やってんの?」
「た、たいぞ……?」
お客じゃないと分かると、中でお化け役をしている人たちは私を脅かすことなく出口に誘導してくれた。
何分かぶりの外の明かりが見えて、ホッと胸を撫で下ろす。
目を丸くしている大蔵に事情を説明すると、向こうで受付をしている男の子にちらりと視線を向けた。
大蔵に睨まれた人はみるみる顔を青ざめさせて、両手を合わせて「ごめんね」と口を動かしていた。
「じゃ、行くか」
「え?勝手に離れても大丈夫?」
「時間過ぎてるし、俺一人くらいいなくても人は余るくらいだから。それより」
そっと指先が触れて、そのまま絡まる。
ひんやりとした大蔵の手の温度が、私の手に少しずつ移ってくるのが分かった。
「みあと回るの楽しみにしてたし」
人目を憚らず、平然と手を繋いでいる大蔵とは相反して、人目が気になってしまう私は気が気じゃない。
そわそわしながら廊下を歩いていると、大蔵がぷっと吹き出した。
「挙動不審すぎだろ。どこの不審者だよ」
「だ、だって」
やっぱり慣れない。
こういうことが普通に出来る日が来るなんて想像できないくらい。
「離してほしい?」
「え?」
「でも無理。今日だけだから我慢しろ」
「今日だけって……」
きっと今日が文化祭だから、こんな風に学校の中で手を繋ぐのが今日だけだって意味で言ったのだと思う。
それなのに、妙な違和感を感じて胸がざわざわした。