お日様のとなり
「イチ、また写真撮りにきたの?」
「写真部だからね」
「じゃあ練習見に来てよ!あたしイチの写真好き」
「いいよ。でも今日撮るのは俺じゃなくて」
話をしている2人が揃ってこちらに顔を向けた。
どうしようか迷った末、少し離れた場所に移動した私にはその会話がまったく聞こえていないから、ドキリとした。
「あれ?垣谷さん、写真部だったっけ?」
タタッと目の前に走ってきた橋本さんは、私がデジカメを持っていることに気付いて首を傾げた。
「うん。今日はとりあえず仮入部なんだけど」
「そうなんだ!じゃあ垣谷さんにも格好良いとこ撮ってもらわなきゃね!」
明るく橋本さんは言うけれど、私が撮ってもいいのだろうか。
本当はイチくんに撮ってもらいたいんじゃないのかな。
さっきイチくんと話す橋本さんはとても嬉しそうな顔をしていたから、私にはそんな風に見えた。
「あ、そろそろ練習戻らないと。じゃあね!」
軽く片手を上げると、橋本さんはまた走って陸上部の練習場所に戻って行った。
そんな彼女の後ろ姿をなんとなく写真に収めてみた。