お日様のとなり
ふとイチくんの方に顔を向けると、耳まで赤くなっているのが見えた。
かなりお疲れの様子らしい。
「あ、私、何か飲み物買ってくる。何がいい?」
「え、どうして?」
「だって疲れたって言ってたし。今、イチくんの顔真っ赤だよ?」
「あー」
歯切れの悪い返事。
デジカメを起動させても遠くを見つめたままで、さっきみたいに真剣に見てくれないイチくんに少し、ほんの少しムッとした。
「いいや。たぶん、これは違うから」
「違うって何が違うの?」
イチくんの言っている意味がよく分からなくて、食い下がって次の言葉を待ってみる。
そしたら手が伸びてきて、ぎゅっと鼻先をつままれた。
「な、何すんの?!」
「うるさい。これ以上じろじろ見るな」
「ちょっと、どういう意味?」
立ち上がったイチくんは上着を頭からかぶると、わしゃわしゃと顔の汗を拭いながら校舎の方に向かって歩き出した。
走って追いかける私は、しばらく顔を見せてくれないイチくんにハテナマークが浮かぶばかりだった。